今日は月イチの幹部会議。数ある会議の中でも、一番緊張するやつだ。
しかも今日は、隣の席に気になるあの子が座っている。ただでさえ張り詰めた空気なのに、緊張が二重にかかる。
会議が始まった。資料の説明、数字の話、真面目な空気。
その最中、異変が起きた。
……ヤバい。腹が、主張している。
おならだ。
確実に、おならだ。
ここで出したら終わる。
人生が終わる。
我慢する。
とにかく我慢。
腹に全神経を集中させる。
表情は平静を装う。
発言が振られても、内容が頭に入ってこない。そして、ついにその瞬間は訪れた。
……出た。奇跡的に、音は出なかった。
ここまでは完璧だ。「勝った」と一瞬思った。だが、勝負はここからだった。
時間差で、ゆっくりと広がっていく。確実に、空気が変わっていく。
臭い。隣を見る。気になるあの子は、まだ平然としている。
気づいていない
……はずだ。
でも、会議室の空気が、少しずつ重くなっていくのを感じる。誰も何も言わない。誰もこちらを見ない。この沈黙が、逆に怖い。
ここで取った行動は、極めてシンプルだった。
・姿勢を正す
・資料を真剣に読む
・水を一口飲む
・メモを取り始める
「自分は今、会議に全集中しています」という雰囲気を全力で演出する。誰のせいか分からない。誰も言及しない。会議は淡々と進んでいく。
数分後。空調が仕事を始めたのか、臭いは自然と消えていった。会議は何事もなかったかのように終了。誰にも指摘されることはなかった。
あの子も、何も言わなかった。
家に帰って、ようやく安堵した。
今回の教訓はこれだ。
・会議室では、動揺した方が負け
・音が出なければ、話題にしないのが最適解
・人は思った以上に、他人のおならを深掘りしない
そして何より、「平然としていること」は、最高のカモフラージュだということ。幹部会議は、今日も無事に終わった。


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